この記事の結論
Ping値の改善は、回線を乗り換える前にできることがかなり残っています。
先に契約を変えてしまうと、原因が宅内側だった場合に工事費と数年の契約だけが残ります。費用がかからない順に試して、それでも直らないときに回線を検討するのが正しい順序です。
Ping値には「これ以上下がらない下限」がある
対策に入る前に、自分のPing値にどれだけ改善余地があるかを先に知ってください。ここを飛ばすと、すでに下限に張り付いている回線を「遅い」と判断して乗り換えることになります。
Ping値は信号がサーバーまで往復する時間なので、距離で下限が決まります。光ファイバーの中を光が進む速さは真空中の約3分の2、およそ20万km/秒です。ここから最短の往復時間が計算できます。
| サーバーの所在 | 直線距離の目安 | 往復の物理的な下限 |
|---|---|---|
| 同じ都市圏 | 50km前後 | 1ms未満 |
| 東京 ↔ 大阪 | 400km前後 | 約4ms |
| 東京 ↔ シンガポール | 5,300km前後 | 約53ms |
| 東京 ↔ 北米西海岸 | 8,300km前後 | 約83ms |
実際の回線は直線では敷かれておらず、途中の機器でも処理時間が乗ります。そのため実測は下限の2〜3倍になるのが普通です。国内サーバーで20ms前後、北米サーバーで100ms前後なら、それは「悪い回線」ではなく距離なりの値です。
判断はこうなります。
- 実測が下限の2〜3倍に収まっている → 回線を変えても縮みません。サーバーの選択か、ゲーム側の問題です
- 実測が下限の5倍以上、または時間帯で大きく振れる → 宅内か回線に原因があります。以下を順に潰します
まず「何が悪いのか」を確定させる
体感が悪いとき、原因は次のどれかです。切り分けずに対策すると外します。
| 症状 | 疑うところ |
|---|---|
| Wi-Fiだと悪く、有線だと問題ない | 宅内のWi-Fi環境 |
| 夜だけ悪化する | 共用設備や経路の混雑 |
| 特定のゲームだけ悪い | そのゲームのサーバー側 |
| いつでも一定して悪い | サーバーとの距離、経路 |
| 急に悪くなった | 機器の不調、設定変更、同居人の利用増 |
数字で測る
体感ではなく数字にします。OSに最初から入っているpingコマンドが最も確実で、追加のインストールも要りません。
- Windows: コマンドプロンプトで
ping -n 20 8.8.8.8 - Mac: ターミナルで
ping -c 20 8.8.8.8
20回続けて測り、最後に出る要約を見ます。見る値は3つです。
| 見る値 | 意味 | 悪いときの症状 |
|---|---|---|
| 平均(avg) | 往復時間の平均 | 全体的に反応が遅れる |
| 最大と最小の差(stddev) | ばらつき=ジッタ | ときどきカクつく、敵がワープする |
| 損失(packet loss) | 返ってこなかった割合 | 一瞬固まる、切断される |
平均が良くても、ばらつきが大きいか損失が出ていれば体感は悪くなります。ラグの正体は、たいてい平均ではなくこの2つです。損失は0%が正常なので、数%でも出ているなら宅内の機器かケーブルを先に疑ってください。
これを有線とWi-Fiの両方で、悪くなる時間帯に測ります。1回だけの測定では判断できません。
費用ゼロでできること
上から順に効果が大きいものです。
1. 有線LANにする
最も確実です。Wi-Fiは電波状況で遅延がゆらぎます。ゲーム機やPCだけでもLANケーブルで繋いでください。距離があるならフラットケーブルで壁沿いに這わせる手もあります。
これで直るなら、回線を変える必要はありません。
2. ゲーム内のサーバーを選び直す
地域サーバーを選べるタイトルなら、物理的に近いサーバーにします。遠いサーバーに繋いでいる限り、どんな回線でも往復時間は縮みません。
3. 同居人の利用と重ならないようにする
大容量のダウンロードや動画視聴が並走していると影響します。ゲーム機やPCの自動アップデートを手動に切り替えるだけでも変わります。
4. 不要な常駐通信を止める
バックグラウンドの同期、クラウドバックアップ、配信ソフトなど。プレイ中だけでも止めます。
5. VPNを経由していないか確認する
経路が伸びるぶん遅延が増えます。ゲーム用途では原則オフです。
6. IPv6(IPoE)で繋がっているか確認する
夜だけ悪化する場合、原因が接続方式であることがあります。
従来のPPPoEという方式では、プロバイダの手前にある装置に利用者が集中します。ここが混むと、回線の速度そのものは足りていても遅延が伸びます。IPoE(IPv6)はこの装置を通らない経路を使うため、混雑時間帯の悪化を避けやすくなります。追加費用なしの申し込み、または標準提供としているプロバイダが多いので、まず自分がどちらで繋がっているかを確認してください。
ゲームで注意が要るのはここからです。ゲームの通信の多くは今もIPv4なので、IPoEの恩恵を受けるにはIPv4 over IPv6(v6プラス、transixなどの名称)を併用する必要があります。そしてこの方式では使えるポートが制限され、対戦ゲームのNATタイプが厳しくなることがあります。
- 対戦・マッチングが中心 → NATタイプが悪化しないかを確認してから切り替える
- MMOやシングル中心 → 混雑回避の効果が大きいので、切り替える価値がある
機器側で見直すこと
ルーターの世代
数年以上前の機種は、同時接続が増えると処理が追いつかず遅延が増えることがあります。買い替えは費用がかかりますが、回線を乗り換えるより安く済むことが多いです。
Wi-Fiを使わざるを得ない場合
- 5GHz帯に繋ぐ。2.4GHzは電子レンジやBluetoothと干渉しやすい
- ルーターは床置きを避け、遮蔽物のない位置に置く
- ルーターとの距離が遠いなら中継機やメッシュを検討する
ただし有線に勝つことはありません。可能なら有線が最善です。
NATタイプが「制限あり」になっていないか
ゲーム機の接続テストで確認できます。ここが厳しいと、Ping値とは別にマッチングに時間がかかる、特定の相手と繋がらない、ボイスチャットが機能しないといった症状が出ます。
| ハード | 良好 | 制限あり |
|---|---|---|
| PlayStation | タイプ1・タイプ2 | タイプ3 |
| Nintendo Switch | A・B | C・D・F |
| Xbox | オープン | モデレート・厳格 |
制限ありに該当するときは、ルーターのUPnPを有効にするのが最初の手です。それで直らなければ、ゲームが指定するポートを手動で開放します。これはルーターの設定の問題なので、回線を乗り換えても設定が同じなら同じ結果になります。
それでも直らないときは回線を見る
有線でも、夜間など特定の時間帯に大きく悪化する。 これが確認できたときが、乗り換えを検討する条件です。
回線の選び方と、料金を実質月額で比べた結果は次の記事にまとめています。
よくある質問
Ping値はいくつなら十分ですか
絶対値ではなく、サーバーまでの距離で決まる下限との比で見てください。実測は下限の2〜3倍になるのが普通で、国内サーバーで20ms前後、北米サーバーで100ms前後なら距離なりの値です。この範囲に収まっているなら、回線を変えても縮みません。
有線にしてもPingが下がりません
距離由来の下限に張り付いている可能性があります。pingコマンドで平均だけでなくばらつきと損失も見てください。平均が良くてもばらつきが大きいか損失が出ていれば、そちらが体感を悪くしています。
ルーターを買い替えれば良くなりますか
同時接続が増えたときに処理が追いつかない古い機種なら効果があります。ただし費用はかかるので、先に有線化・サーバー選択・常駐通信の停止を試してください。それで直るなら支出はゼロです。
IPv6にすればPingは下がりますか
夜だけ悪化する場合には効果が見込めます。混雑する装置を通らない経路を使うためです。ただしゲームの通信の多くはIPv4なので IPv4 over IPv6 の併用が必要で、その方式ではNATタイプが厳しくなることがあります。対戦中心なら切り替え前に確認してください。
NATタイプが悪いとPingも悪くなりますか
Ping値とは別の問題です。マッチングに時間がかかる、特定の相手と繋がらない、ボイスチャットが機能しないといった形で出ます。まずルーターのUPnPを有効にしてください。
回線を乗り換えれば必ず改善しますか
改善が見込めるのは「有線でも、夜間など特定の時間帯に大きく悪化する」場合だけです。それ以外で乗り換えると、工事費と数年の契約だけが残ります。
注意
通信品質はエリアや宅内環境で個人差があります。機器の設定変更は取扱説明書を確認のうえ行ってください。